研究概要 |
TnT遺伝子突然変異によるHCMの病態発生メカニズムを明らかにすることを目的にPCRによる部位特異的変異誘発法をもちいて遺伝子工学的に大腸菌に発現させ精製したヒト突然変異心筋TnT分子を、独自に開発したin vitro TnT交換法をもちいてウサギ摘出心臓左心室肉柱より調整した脱鞘筋繊維(スキンドファイバー)に組み込み、現在までに7種類の突然変異(Ile79Asn,Arg92Gln,Phe110Ile,ΔGlu160,Glu244Asp,Arg278Cys,Intron 15G_1→A)が生理的心筋収縮機能に及ぼす影響を調べた。突然死の割合が高く予後が不良であることが統計学的に明らかになっている突然変異(Ile79Asn、Arg92Gln、ΔGlu160、Int15G_1→A)はすべてCa^<2+>感受性を高めていることが明らかになった。一方、予後が唯一良好であることが知られているミスセンス突然変異Phe110IleはCa^<2+>感受性を変えず、最大収縮力を有意に増加させることが明らかになった。これらの結果は、TnT遺伝子突然変異によるHCMの病熊発生において、おそらく最初の原因としてCa^<2+>感受性増強という心筋収縮装置自体の機能的変化が関わっていることを強く示唆している。Ca^<2+>感受性増強はHCMに特徴的な臨床所見である心臓過収縮性と拡張障害を説明するものである。残り7種類すべての突然変異をPCRによる部位特異的変異誘発法をもちいてヒト心筋cDNAに導入することに成功した。現在、機能解析のために大腸菌に発現させた突然変異体蛋白質の精製を進めている。
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