研究概要 |
発熱は、内因性発熱物質が視床下部に作用して、アラキドン酸(AA)カスケードを賦活することにより発現する。近年、AAカスケードにチトクローム(CY)P-450代謝系の存在が解明され、本研究グループがこの代謝産物に解熱作用があることを発見した。本研究はCYP-450による解熱機構の全体像を解明するために企画し、以下の成果を得た。 (1)IL-1βをラットの視索前野へ注入し発熱を生じさせ、この発熱に対しCYP-450の代謝産物である5,6-エポキシエイコサトリエン酸(EET)、8,9-EET、11,12-EETおよび14,15-EETを視索前野へ投与したラットの発熱パターンを解析したところ、11,12-EETのみが発熱を抑制した。この結果より、解熱活性のあるCYP-450代謝産物は11,12-EETであることが判明した。 (2)EET作用を発現する脳内部位を検索するため、LPSを腹腔内に投与して誘発した発熱に対する、視床下部を中心として脳内各部位へ微量注入したCYP-450阻害剤(SKF-525A)の効果を検討した。その結果、後視床下部、fornix注入では発熱に効果を及ぼさなかったが、第III脳室、視索前野に注入すると発熱を増強した。これらの結果より、EETは体温調節中枢である視索前野に作用し解熱効果を発現することを解明した。 (3)既知の内因性解熱物質であるバソプレッシン(AVP)とEETとの関連を解析した。AVPの作用発現部位である腹側中隔野にSKF-525Aを微量注入し、発熱に対する効果を解析したところ、視索前野注入より効果が少なかった。更に、SKF-525を投与してもAVP微量注入による解熱作用を阻止できないことから、EETはAVPと独立した機構で内因性解熱作用を発現すると考えられる。
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