研究概要 |
本研究では,妊娠ラット及び授乳中のラットに,喫煙の主成分であるニコチンを摂取させ,新生仔脳内のコリン作動性神経に対する影響を検討した。 1)^3H-QNB結合を指標としてムスカリン受容体を検討したところ,大脳皮質においては生直後からムスカリン受容体が出現し,ほぼ直線的に増加して生後5週で成体レベルに達した。小脳でも同じような発達がみられたが,中脳,海馬では生後2週で成体レベルの約80%,脳幹においてはほぼ100%と早い発達がみられた。 2)ムスカリン受容体サブタイプ特異的なピレンゼピン(M1),AF-DX116(M2)を用いた検討から,大脳,海馬はM1優位,小脳,中脳,脳幹はM2優位であった。 3)コリン作動神経終末に特異的に存在するコリントランスポーターの発達を^3H-hemicholiniumを用いて検討したところ,中脳,海馬と同じ発達パターンを示した。 4)ニコチンの投与により,生後2週で大脳皮質においてM1の,小脳においてはM2の発達が著明に抑制された。この抑制は生後5週では消失し,一過性のものと考えられた。また,他の部位では抑制は認められなかった。 5)大脳のコリントランスポーターの発達もニコチン投与により抑制がみられ,ムスカリン受容体と同じ時期に生じていた。 以上の結果より,ニコチン投与により大脳及び小脳においてはコリン作動神経系の生後早期の発達が抑制され,喫煙による小児学習障害などの発達障害の一因である可能性が示唆された。
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