研究概要 |
293細胞に発現したPAP2bは、培地中のLPA(C18:1)および短鎖PA(diC8:0)(各5μM)を0.1%BSA共存下に水解、強い細胞表面活性を示した。一方、培地中の長鎖PA(diC18:1)はほとんど分解しない。また、細菌由来PLD添加にともなって細胞表面膜上に生じるPAもほとんど水解することができなかった。界面活性剤TritonX-100(TX100)存在下ではこの増大したPAが速やかにDGへと分解されるので、intactな膜中に存在するPAP2bは何らかの理由によって長鎖PAを基質として利用できない可能性が示唆された。(以上、Ishikawa et al.,2000,J.Biochem,127,645-651)次にPAP2とラフトとの相互作用を調べた。TX100はPAP2aを可溶化する一方でPAP2bを可溶化しなかった。しかしCHAPSを用いるとどちらのPAP2も全く可溶化されず、詳細な検討によってPAP2aとPAP2bのどちらもラフトに局在することが示された.ともにラフトに局在しながらもTX100への可溶性が全く異なるという性質力が、どのような生理的意味を持つのだろうか。我々はPAP2a-YFPとPAP2b-CFPをCOS7細胞に共発現させ、ゴルジ体から表面膜への輪送過程を観察した。その結果、両アイソザイムは輸送小胞への分布も異なっていた。すなわち直径500nm超の大きな小胞にはPAP2a、2bの両者が共に含まれていたが、直径200nm以下の小さな小胞にはPAP2bしか観察されなかった。したがってPAP2アイソザイムの異なるラフト相互作用がゴルジ体からの仕分と輸送の相違を反映する可能性が高い。実際、分極したMDCK細胞ではPAP2aはapicalドメインヘ、そしてPAP2bはbasolateralドメインヘ、互いに全く異なるサブドメインに局在を示した。PAP2aのapicalシグナルは細胞質内に位置し、N末端の2番目から7番目までの6残基(FDKTRL)であることを示した。
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