レプチンは、視床下部に作用を及ぼして摂食量を低下させると共に、末梢組織におけるエネルギー消費を亢進させることによって抗肥満作用を惹起する。しかし、レプチンがグリコース代謝に対してどのような調節作用を営んでいるかはほとんど明らかとなっていない。最近、申請者はこの問題に関して、ラット視床下部腹内側核(VMH)にレプチンを投与すると、褐色脂肪組織(BAT)、心臓並びに骨格筋におけるグルコースの利用を選択的に促進することを見出した。本研究では、グルコース利用に及ぼすレプチンの促進作用が、VMH-交感神経系を介したインスリン非依存性の機構であることを明確にするため、交感神経の作用遮断剤であるグアネチジンの影響を調べるとともに、インスリンとの相互作用を検討した。 ラットのVMHにレプチンを投与すると、BAT、心臓、骨格筋において3倍から4倍に亢進した。ところが、ラットにグアネチジンを投与すると、これらの反応はほぼ完全に抑制された。一方、両側の副腎髄質を摘除した場合にはレプチンの効果に何ら影響が無かった。次に、インスリンとの相互作用を調べた。レプチンは、BAT、心臓、骨格筋におけるインスリンによる最大のグルコースの取り込み促進作用を更に増強した。これに対して、白色脂肪組織ではむしろ低下させた。また、肩甲間BATの左右組織の内、一方の組織に分布する交感神経を外科的に切除し左右組織を比較したところ、交感神経を切除してもインスリン作用に影響はなかったが、レプチンによるインスリン作用の増強効果は、ほぼ完全に抑制された。これらの実験結果から、レプチンによるグルコースの取り込み促進作用は、組織を支配する交感神経の作用であることが明らかとなった。
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