研究概要 |
小円形細胞肉腫であるユーイング肉腫,末梢型神経外胚葉性腫瘍では特異的な変異遺伝子であるEWS/Fli-1の存在が指摘されている。今回我々は,ユーイング肉腫群13例を用い,変異遺伝子の解析を行った。一方,c-kit遺伝子が消化管間質腫瘍(GIST)に発現をみ,exon 11の変異が報告されている。c-kitの膜貫通前後部分であるexon9〜11のmRNAの変化をGIST26例,横紋筋肉腫8例,神経芽腫1例,神経鞘性腫瘍9例,平滑筋肉腫9例で比較検討した。 1)ユーイング肉腫肉腫群のEWS/Fli-1変異遺伝子の解析 13例全例にEWSとFli1間の相互転座に伴う融合変異遺伝子の形成が見られた。7例でゲノムDNAの塩基配列を検討すると4例に切断点近傍両側に5′-AGAAAARDRR-3′の配列を認め,また,大部分の症例に切断点近傍にAlu配列やeukaryotic topoisomerase II cleavage siteの存在を認めた。これらの変化はユーイング肉腫群に特異的で,腫瘍の発癌機構に関与していると思われた。 2)c-kit遺伝子の発現と変異の解析 GISTでは26例全例が免疫染色にてc-kit陽性を示し,24例にexon9〜11に変異を認め,20例ではexon11に欠失や挿入がみられた.欠失はexon11のcodon550〜560間に集中していた(13例).免疫染色で発現をみない横紋筋肉腫7例,神経芽腫1例,神経鞘性腫瘍全例,平滑筋性腫瘍7例にexon9〜11にGISTと同様の変異を認めた.GISTに特異的なexon11の欠失や挿入は,横紋筋肉腫5例,神経芽腫1例,神経鞘性腫瘍5例,平滑筋性腫瘍3例に検出された。GIST同様にexon9〜11の変異をみたことは,非上皮性腫瘍の発癌機構に共通した変化の存在を示唆している。 GISTではc-kitの産物蛋白の発現をみるが,非GIST群では観察されない。c-kitの発現と機能に関する検討が今後必要であり,腫瘍の発生,分化,さらに病理診断に応用されると思われる。
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