研究概要 |
肝細胞増殖因子活性化因子(Hepatocyte Growth Factor Activator,HGFA)は肝細胞増殖因子(HGF)を特異的に活性化させるセリンプロテアーゼで、その活性調節因子であるHGF activator inhibitor type-1(HAI-1)及びtype-2(HAI-2)とともに東京工大の喜多村らのグループによって発見された蛋白である。HAI-1,HAI-2はKunitz型と呼ばれるタイプのセリンプロテアーゼインヒビターで、プロテアーゼと可逆的に結合できるのが特徴である。したがってKunitz型インヒビターは本来のインヒビターとしての働きより、プロテアーゼ結合蛋白としてプロテアーゼの運搬や保護の役割を果たしたり、レセプターとしてプロテアーゼの細胞膜上への凝集の役割を果たしている可能性がある。本研究はHGFA,HAI-1,HAI-2遺伝子欠損マウスを作製し、生体内でのこれらの蛋白の機能解析とともに、Kunitz型インヒビターのインヒビターとしての作用以外の本来の機能を明らかにすることを目的としておこなわれた。 まず、マウスHGF Activator,HAI-1,HAI-2 cDNA及びGenomic DNAをクローニングし、mutationを加え、遺伝子を不活化したtargeting vectorを作製し、第一段階として、熊本大学動物資源センターの山田源教授らのグループの協力を得て、ES細胞にエレクトロポレーション法によりHGFAのTargeting vectorの導入を行なった。相同組み替え体をポジティブネガティブ選択法によって選別、8細胞胚に注入した後、偽妊娠マウスに移植しキメラマウスを得た。さらにC57BL/6マウスと交配し現在数匹のへテロマウスを得て、ホモ欠損マウスを作成すべく現在交配中である。また、関連研究としてマウスHAI-1が実験大腸潰瘍モデルの治癒期に高発現してくることや、マウスHAI-2の新しいスプライシングバリアントを発見した他、抗HAI抗体を用いた免疫組織学的検索により、HAI-1が再生上皮や癌細胞浸潤先端に検出されることやHAI-1の細胞膜上でのreservoirとしての役割を報告した。
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