研究概要 |
中枢神経系の血管は血液脳関門(blood-brain barrier、以下BBB)機能を有し、神経細胞が正常に機能できる至適環境を維持する。我々は、ウズラーニワトリ胎児間異種移植系に基ずくBBB誘導モデルおよびウズラ胎児脳の解析を通じ、胎児脳細胞の産生するVEGFがisoform(ウズラではVEGF_<122>,VEGF_<146>,VEGF_<166>,VEGF_<190>の4種)の発現様式の変化を通じBBB誘導に関与することを示唆する知見を得た。即ち、BBB誘導期に脳組織特異的にVEGF_<146>の発現が亢進することを明らかにした。さらに我々は、中枢神経系の一部である網膜組織にもBBBに相当する血液網膜関門(blood-retinal barrier、以下BRB)が存在することに注目し、BRBの破綻を伴う病態である糖尿病網膜症病変の解析を通じて、中枢神経系におけるbarrier誘導機構の一端、特にVEGFの関与ににつき検討を加えた。ヒト糖尿病患者より手術的に切除された眼内病変を対象とし、VEGF isoform(ヒトではVEGF_<121>,VEGF_<145>,VEGF_<165>,VEGF_<189>,VEGF_<206>の5種)およびVEGF受容体(VEGF-R1,VEGF-R2,neuropilin-1)の発現を検索した。その結果、糖尿病網膜症病変の活動性には、血管内皮細胞におけるVEGF-R2・neuropilin-1を介したVEGF_<165>からの細胞内シグナルが重要な役割を演ずることが示唆された。即ち、ウズラ胎児脳を用いた検索結果と同様に、局所組織におけるVEGF isoform発現様式が中枢神経系血管のbarrier機能と密接に関係することを示唆する知見と考えられた。
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