研究概要 |
アロ骨髄移植(BMT)では、骨髄ストローマ細胞(BMSC)の補充により、移植成績が向上する。その機序を詳しく解析し、以下の知見を得た。 1.ドナー骨を同時移植すると、ドナーBMSCの生着がレシピエントの骨髄及び胸腺に認められ、また、レシピエントのT細胞はドナータイプへの拘束性を獲得し、免疫応答の完全な回復が見られた。ドナーBMSCが胸腺へ移住し、positive selectionに関与すると考えられる(Exp.Hematol.28:950,2000)。 2.ドナー骨髄細胞(BMSCも含有)を門脈経路(PV)で移入するとトレランスが誘導されやすい(Proc.Natl.Acad.Sci.95:6947,1998)。骨髄細胞を造血幹細胞(HSC)とBMSCとに分けた場合、両者を混合しPVで移入した時のみ肝内に造血コロニーが認められ、脾での造血コロニー形成も向上した。BMSCが宿主の肝内にまず生着し、そこでHSCが増殖分化し脾へも移住したと考えられる(Stem Cells19:144,2001)。 3.BMTの成立しにくい(chimerism resistance)系でも、レシピエントを分割照射(5.5〜6Gy)し、PVで骨髄細胞を移入、さらに静脈内へ骨髄細胞を追加投与すると生存率が著しく上昇した。PVでの移入により、まずBMSCが肝にtrapされて造血コロニーが形成され、次に骨髄、脾に造血の場が移行したと考えられる(Stem Cells2001,in press)。 4.MHC class I knockout miceおよびH-2congenic mice由来のHSCとBMSCとの共培養実験を行い、両者間に存在するMHC拘束性を検討した。MHC遺伝子のKとD locusが拘束性を規定しているものと考えられた(Stem Cells19:46,2001)。
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