研究課題
基盤研究(C)
ScidマウスはDNA-PKcsの異常により免疫不全を有すると共に放射線感受性が高く、ヒトの末梢血管拡張性運動失調症(AT)に類似した症状を示す。このScidマウスは放射線発がん感受性が高かったことから、放射線発がんの特性および放射線発がん機構を解析することを目的とした。まず、Scidマウス、C.B-17マウスおよび交雑初代(F1)マウスにγ線を照射し、発がん性を検討した。照射されたScidマウスでは胸腺リンパ腫の発生が高率であったが、C.B-17マウスとF1マウスでは低かった。また、γ線照射後Scidマウスに野生型マウスの骨髄を移植して胸腺リンパ腫の発生を抑制し、その他の組織の放射線発がん感受性を検討したが有意に増加する腫瘍はなかった。さらに遺伝的背景の異なるC3H Scidマウスを用いて放射線感受性と放射線発がん感受性を解析したところ、C.B-17 Scidマウスに比べて放射線感受性も発がん感受性も高い可能性が示され、これらの感受性を修飾する遺伝子が存在することが示唆された。次に、発生した胸腺リンパ腫において変異している遺伝子の検索を行った。この結果、細胞膜貫通型受容体をコードするNotch1遺伝子に高率な変異が認められた。この遺伝子のゲノム構造を解析したところ、45.6kbにわたって存在し、34個のエクソンを有していた。胸腺リンパ腫では放射線誘発リンパ腫発生抵抗性のSTSマウスやC.B-17マウスでの再構成は20%であるのに対し、高線量で誘発したScidマウスの胸腺リンパ腫では高率に、遺伝子内欠失、IAPの挿入、遺伝子内逆位などの変異が認められた。さらに、ゲノムの再編成に伴う異常なmRNAの産生と異常たんぱく質が産生されることが証明され、Notch1遺伝子は、放射線誘発胸腺リンパ腫の発生に関して情報伝達系の恒常的活性化を通してがん遺伝子として作用することが強く示唆された。
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