研究概要 |
我々はトキソプラズマ感染宿主細胞の抗原提示機構の解析から、分子シャペロンHSP70が宿主細胞内抗原提示機能分子として働くことを明らかにし、トキソプラズマ分子シャペロン遺伝子およびトキソプラズマSAG1遺伝子をワクチン遺伝子として抗原提示細胞に導入して防御免疫反応誘導を目的とした遺伝子ワクチン開発を進めている。今迄に、1)トキソプラズマSAG1遺伝子導入抗原提示細胞による防御免疫の誘導により遺伝子ワクチン開発の研究基盤を確立し、2)トキソプラズマHSP70をクローニングしてトキソプラズマ分子シャペロHSP70およびHSP30/bag1をワクチン抗原とした宿主防御免疫誘導能を解析し報告した(Microbiol.Immunol.43:87,1999;IXth International Congress of Parasitology,Monduzzi Editore,457,1998;Jpn.J.Trop.Med.Hyg.26:305,1998;Microbiol.Immunol.43:471,1999:Cell Stress & Chaperones,5(4):328,2000)。 本研究ではさらに、トキソプラズマ感染感受性C57BL/6マウスおよび抵抗性BALB/cマウスのプロフェショナル抗原提示細胞(皮膚ランゲルハンス細胞(LC)・樹状細胞(DC))に遺伝子銃を用いてトキソプラズマ分子シャペロンおよびSAG1遺伝子を直接遺伝子導入した上で、この遺伝子ワクチン化皮膚片を移植して効率良く防御免疫を誘導する遺伝子ワクチン法の開発を進めた。その結果、(1)SAG1遺伝子導入C57BL/6およびBALB/cマウスの皮膚片を(C57BL/6xBALB/c)F1マウスに移植すると、Donor皮膚片の遺伝子導入LC/DCがRecipientの局在リンパ節に遊走してSAG1遺伝子導入C57BL/6皮膚片の移植を受けたF1マウスに抗SAG1抗体産生が優位に誘導されることが示され、さらに(2)BALB/c皮膚片の移植を受けたF1マウスには防御免疫が誘導されることを明らかにし報告した(Vaccine,in press)。遺伝子ワクチン化皮膚移植により、DonorのLC/DCによってRecipientにワクチン遺伝子産物に対する免疫応答反応を起こさせる方法を確立し、さらに、低応答性であるF1マウスにBALB/cの高応答性を起こさせることに成功した。
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