研究概要 |
旅行者や海外での働く人々の増加により、日本人には殆ど馴染みのない病原真菌に現地で感染し、帰国後発症するいわゆる「輸入真菌症」が増加して大きな問題になっている。原因真菌としては、東南アジア地域でマルネッフェイ型ペニシリウム症を起こすP.mameffei、アジアで問題となっているヒストプラズマ症を起こすH.capsulatum,北米、中米にかけて流行しているコクシジオイデス症を引き起こすCoccidioides immmitis,きらに南米地域で流行しているパラコクシジオイデス症の原因菌であるP.brasiliensisが知られている。 本研究の目的は、これらの輸入真菌症の原因真菌について、詳細に遺伝子解析を進め、これらの遺伝子の情報に基づいて、原因菌の簡便な同定システムを開発することにある。さらにこれらの感染菌の分子疫学的研究を進め、感染を予防するための情報を得ることをも目的とする。 1)P.marneffeiについては、我々の報告したPCR primerの有効性を多くの株で確認すると同時に、多くの臨床分離株についてITS領域の塩基配列を決定して登録した。 2)P.brasiliensisについて、リボゾームのITS領域を解析して、本菌株に特異的なPCRによる同定用プライマーを作製することができた。また多くの株を用いて、海外よりの帰国者よりの分離株を含む本菌による疾患ではその原因菌の同定には、本PCRプライマーが有用であることを証明し報告した。またnested PCRによりP.brasiliensisの真菌要素を組織から見出す研究を進めている。 4)エイズ患者に特異的に感染する病原真菌C.neoformans(Serotype B)が、その遺伝子パターンおよびITS領域の遺伝子配列から、4つのグループに別れることを見い出した。 5)世界の各地から分離した約50株のH.capsulatumについてITS領域の塩基配列を決定し、H.capsulatumはAsia type,North America type A,B,South America type 1,2およびH.duboisii typeの6つの遺伝子型に分けることができた。新たに本邦で分離したH.capsulatum株に対して、新しい遺伝子タイプ(East Asia type)を提案した。
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