研究課題/領域番号 |
11670268
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小崎 俊司 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10109895)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2000年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1999年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ボツリヌス菌 / 神経毒素 / 受容体 / 変異体 |
研究概要 |
わが国で初めて発生したB型乳児ボツリヌス症から分離された菌(111株)の産生する神経毒素(NT)の性状を詳細に調べ、従来から知られている食中毒由来菌株(Okra株)の神経毒素と較べた結果、毒素活性が低く、これが受容体への結合活性低下に起因していることを明らかにした。さらに、毒素遺伝子の解析に基づく受容体への結合親和性に影響をおよぼす神経毒素分子の構造変化を調べ、あわせて受容体認識領域のリコンビナント蛋白の調製を試みた。菌体DNAを鋳型としてPCRを行い、得られた産物から111/NTおよびOkra/NT遺伝子の塩基配列を決定した。111/NTおよびOkra/NTの構成アミノ酸残基数(1291残基)は同じであったが、受容体認識領域とされている重鎖C末端領域の相同性は約90%で、他の軽鎖、重鎖N末端領域と比べ低かった。さらに神経毒素分子の推定される立体構造から重鎖C末端領域内で異なる部位をアミノ酸レベルで解析した結果、変位部位の約70%のアミノ酸が分子表層に露出していることが予想された。各受容体認識領域分子量54kDaのリコンビナント蛋白(rOkra/Hcとr111/Hc)を得ることができた。rOkra/Hcはr111/HcよりもOkra/NTの受容体への結合を効率良く阻害した。Okra/Hcの種々の点変異体を調製し、それぞれの受容体への結合活性を調べることにより受容体認識に必須な重鎖C末端領域における部位の特定を進めている。 毒素受容体蛋白として同定されているシナプトタグミンIIは、N末端領域60残基内に毒素認識部位が存在する。他のシナプトタグミンアイソフォームとの構造を比較しながら、毒素認識に必須なアミノ酸残基を同定するために40種類の点変異体および欠失変異体を作成し毒素結合活性を調べた。作成した変異蛋白のうち、Phe54、Glu57の変異体は毒素との結合を完全に消失した。また、Ser42、Phe47、Phe55、Asn59の変異体の毒素結合活性は低下した。N末端から40残基までを欠失させた変異体は毒素結合活性を保持していた。これらの結果は、シナプトタグミンII分子N末端領域の40から60残基内に毒素受容体としての機能が集約されていることを示している。さらに、Phe54、Glu57は低親和性結合部位を担うシナプトタグミンI以外の他のアイソフォームには存在しないアミノ酸残基であり、シナプトタグミンIとIIが毒素受容体蛋白として機能するための必須の部位と考えられた。Ser42、Phe55、Asn59はシナプトタグミンII分子に特異的に存在するアミノ酸残基であり、これらがシナプトタグミンIIが高親和性部位として機能するために重要な働きをしていると考えられた。
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