研究概要 |
T細胞特異的に発現する新たなGrb2ファミリー分子Grf40/Gadsを単離した。サイトカイン情報伝達に関わるアダプター分子STAMに会合する分子として我々はAMSHを遺伝子単離した。Grf40変異体を用いてGrf40がT細胞受容体(TCR)の情報伝達にとって重要な役割を担っていることを報告した(Asada,H.et al.,J.Exp.Med.,189,1383-1390)。T細胞株Jurkat細胞において、Grf40はTCR刺激依存性にLATと会合し、またTCR刺激非依存性にGrf40はC末側SH3領域を介してSLP76と会合していた。従来LATとSLP76間のアダプター分子としてGrb2が報告されているが、Grf40はGrb2より高い親和性でSLP76と会合した。TCR情報伝達に対するGrf40の影響を検討したところ、TCR刺激によるIL-2プロモーター活性は野生型Grf40により増強し、Grf40SH2領域欠失変異体により減少した。野生型Grf40による活性上昇は野生型Grb2より強いことから、Grf40がTCR情報伝達において、LATからSLP76へのアダプター分子として重要であることが示された。 Grf40のin vivoにおける機能を解析するために、Grf40SH2領域欠失変異体遺伝子導入マウスを作製した。このマウスでは胸腺細胞数が減少し、CD4-CD8-胸腺細胞数の軽度の増加が認められた。また、胸腺細胞をTCR刺激したときのSLP76、PLCγ1、ERK1/2のリン酸化の低下が認められた(Kikuchi,K. et al.,Int.Immunol.,in press)。この結果から、in vivoにおいてもGrf40は胸腺細胞、特にPreT細胞の分化制御に関わっていることが示唆された。
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