研究概要 |
サイトカインは、その主要なシグナル伝達経路であるJAK-STATシグナル伝達経路を介して、分化、増殖、アポトーシスなどの細胞のホメオスタシスの維持に重要な役割をはたす。SSI-1(別名SOCS-1)はJAK-STATシグナル伝達経路のnegative feedback因子である。SSI-1ノックアウトマウス(KO mice)は、胸腺、脾臓などの臓器において、リンパ球のアポトーシスの増加を伴い生後約2週間で死亡した。このリンパ球のアポトーシスの原因を解明するため、TNF-αのシグナル伝達とSSI-1に焦点を当てて以下の実験を行い、結果を得た。すなわち、SSI-1KO miceのfetal fibroblastをTNF-αで刺激し、その感受性を調べた所、KO miceでTNF-αに対する感受性の亢進が認められた。逆にSSI-1を安定発現させたマウス線維芽細胞株では、TNF-a刺激によるアポトーシスの誘導が低下していた。この作用はSSI-1のファミリー遺伝子であるSSI-3,SSI-5においては認められなかった。次にその機序を明らかにするために、TNF-αシグナルの下流で作用するcasepase-3,8,NF-kB,p38MAPK,JAK-STATについて解析した。その結果、SSI-1 KO miceのfetal fibroblastではp38の活性化が低下しており、反対にSSI-1を安定発現させたマウス線維芽細胞ではp38の活性化の亢進を認めた。これらの結果から、SSI-1は生存シグナルを伝達するp38の活性化を冗進させることでTNF-αが誘導するアポトーシスを阻害することが明らかになった。
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