研究概要 |
gp130は、IL-6ファミリーサイトカインの共通の受容体コンポーネントである。gp130を介するシグナルは大きく、gp130のチロシン759のリン酸化依存性に活性化されるシグナル(SHP2が関与)、YXXQモチーフのチロシンリン酸化依存性に活性化されるSTAT3を介するシグナル、gp130のチロシンリン酸化を介しないシグナル、の三つに分けることができる。1.我々は、細胞株を用いた研究から、gp130を介する細胞増殖シグナルに、チロシン759依存性シグナルとSTAT3シグナルの両方が必要であることを示してきた。本研究では、STAT3の標的遺伝子としてPim遺伝子(Pim-1,2)とc-myc遺伝子が存在し、Pim-1とc-Mycが協調的に機能することで、細胞周期G1-S期移行の制御および細胞死を抑制していることを見出した。また、Pim-1の下流でVCP/Cdc48pが細胞死抑制に機能していることを明らかにした。2.我々は、チロシン759依存性シグナルに関与する分子として、Gab1を同定してきた。本研究では、Gab1欠損マウスの作成を行い、Gab1が胎盤・心臓・皮膚の発生に必須であること、Gab1がgp130のシグナルだけでなく増殖因子EGF,PDGF,HGFのERK MAPキナーゼ活性化へのシグナルに関与していることを見出した。3.また、gp130からのシグナルの生体内での役割を解析するため、チロシン759あるいはYXXQモチーフのチロシンをフェニールアラニンに変異させたgp130を、マウス染色体gp130に置換したマウス(ノックインマウス)を作成し、その解析を行った。その結果、STAT3を介するシグナルが、IgG2a,IgG2b抗体産生・Th1型サイトカイン産生に関与しており、チロシン759を介するシグナルがそれを抑制する方向に働いていることを見出した。
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