研究概要 |
我々は,特定受容体を発現する細胞の試験化学物質に対する反応をマイクロフィジオメトリーアッセイ法によって検出するシステムを考案し,内分泌攪乱作用が疑われる物質に対するスクリーニングへの応用を試みた.マイクロフィジオメトリーアッセイ法は細胞の微細な代謝変動をpH測定によって検出する技術であり,最近ホルモンやサイトカインの研究に多用されるようになった技術である.この方法を応用することで,ある化学物質の内分泌攪乱作用の有無,仲介するホルモン受容体の種類,そのホルモン作用あるいは抗ホルモン作用の強さを明らかにすることが可能である. 今回は,強い毒性を持つ環境汚染物質であり,また最近では内分泌攪乱物質としての作用が注目されているカドミウムの内分泌攪乱作用の測定を,本検出システムを用いて行った.エストロゲン受容体(α型)を発現するMCF-7細胞を用いて,β-エストラジオールと塩化カドミウムの暴露実験を行って結果,10^<-4>Mの塩化カドミウムはエストロゲン受容体(α型)を介する代謝系だけでなく,他の代謝系をも阻害することが分かり,高濃度の塩化カドミウムがエストロゲン受容体(α型)だけを選択的に阻害する可能性は少ないと考えられた.また,ムスカリン受容体を発現するCHO-K1M細胞を用いた実験でも,同様の結果が出ており,カドミウムの阻害作用が特定受容体に限らず細胞の代謝系全般に及ぶことを示唆した.
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