研究概要 |
1980年から1989年までの10年間に原爆被爆者検診を10回以上受診していた男性9,003人、女性18,265人をコホート集団として抽出し、赤血球数,白血球数,血色素量,収縮期血圧,拡張期血圧について、個人ごとに10年間の平均値と変動係数を計算した。対象を、1998年12月31日まで追跡したところ、男性で1,556人、女性で1,977人の死亡が観察された。各検査値の個人別平均値と個人別変動係数と死亡率との関連を比例ハザードモデルを用いて検討した。検査項目に関係なく、検査値の個人内での変動の指標である個人別変動係数が大きくなると、死亡のリスクが増大した。検査値の個人別変動係数の大きさは、生体のホメオスタシスと関連しているとも考えられる。ホメオスタシスは、種々のストレッサーにより、破綻させられると考えられており、ホメオスタシスが破綻しているような場合には、自律神経系や内分泌系さらには免疫系にも変調をきたし、種々の疾患による死亡の危険が高くなる可能性があると思われる。 個人の時系列検査値に影響をおよぼすライフスタイルとして、食生活に対する関心の有無、趣味の有無、運動習慣の有無、飲酒習慣の有無、喫煙習慣の有無を考え、時系列検査値との関連を、重回帰モデルを用いて調べた。今回解析したライフスタイルでは、5種類の検査値の個人別平均値および個人別変動係数との間で、それぞれ延べで10項目および2項目で有意な関連が観察された。しかしながら、食生活に関心があるおよび趣味があると回答した人は、血色素量および赤血球数の個人別変動係数が小さく、死亡のリスクを低下させるという観点からも望ましいライフスタイルであると考えられる。
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