研究概要 |
【目的】加齢にともなって中枢神経系の代償的な機能が低下すると考えられている中高年の人々が、許容濃度近辺の比較的低濃度の有機溶剤に反復曝露された場合に、青年期の人々が曝露を受けた場合の影響と比較して、中枢神経系の慢性的な機能障害を生じ易いのではないかという仮説を若齢(青年期)と老齢(初老期)ラットを用いて、中枢神経系(CNS)のムスカリン性アセチルコリン受容体(mAch-R)の変化を指標にして、トルエンの慢性曝露影響からの回復過程を比較検討した。【方法】若齢ラット:Fischer系雄ラットを昼夜逆転リズムで飼育し,生後4ヶ月齢から、各群6匹の4群をトルエンに曝露した。曝露条件は、0,50,100,1,000ppmの4群で、1日3時間、週5日、3ヶ月間dark periodに実施した。3ヶ月間の曝露終了後3日目に各群6匹を断頭し、冷却下速やかに全脳を摘出し、Grownsky-Iversenの方法に基づいて、7部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床下部、中脳、小脳、延髄)に分割し、リガンドとの結合実験まで-80℃の超低温槽中に保存した。新たに用意したラットに、すべて同一実験条件で曝露を行い、3ヶ月間の曝露終了後2週間目に各群6匹を断頭し上述の7部位に分割して同様に保存した。老齢ラット:Fischer系雄ラットを6~7ヶ月齢で購入し、昼夜逆転リズムで飼育した。生後21ヶ月齢から、各群6匹の4群をトルエンに曝露した。ラットの年齢要因以外は全て若齢ラットの場合と同一の実験条件で実施した。Brandel社のテストチューブ用プローブ付ハーベスタ(M-30)を使用して、Acetylcholineのアンタゴニストである[^3H]QNBとの結合実験を行い、GraphPad社のPrism ver.3.0を使用して、Scatchard解析を行い、BmaxとKdを求めた。結果の統計学的検定はSPSSを使用して分散分析によった。【結果】ラットの大脳皮質と海馬のmAch-Rにおよぼす加齢と有機溶剤曝露の複合影響は検出されなかった。
|