研究概要 |
アルコール代謝の個人差を決定する因子のひとつとしてALDH2遺伝子型がある.即ち,ALDH2^*1/1型の被験者は飲酒後の血中アセトアルデヒド濃度が極めて低く,ALDH2^*2/1型及びALDH2^*2/2型の被験者は全て10μM以上のアセトアルデヒド濃度を示し,顔面紅潮等の不快症状を呈する.そこで各遺伝子型の被験者についてRT-PCR法を用い検討したところ,ALDH2 mRNAは飲酒前から構成的に発現し,少量の飲酒によって著明に増加し,しかもアルコールよりもアセトアルデヒドの影響を強く受けることが明らかになった. このような個人差は,飲酒行動にも大きな影響を及ぼし,依存形成に関与している.そこで飲酒行動と関連する遺伝子を検索するためにWister系雄性ラットの慢性エタノール投与ラットの中枢からtotal RNAを抽出し,differential displayによって関連遺伝子の解析を行った.reverse Northern blotによってコントロールに比べアルコール摂取が影響を及ぼすと考えられる46種のクローンの再増幅に成功した.そのうち,8遺伝子がup-regulateを受け,その代表的なものはヒトTGFβと一致していた.一方,7遺伝子がdown-regulateを受け,その他機能の不明なものも見出された.今後更に,各遺伝子のプロモーター領域及び更に上流領域の解析を行い,個人差並びに依存形成の機序の解明に繋がるものと考えられる.
|