研究概要 |
本研究で得られた研究実績の概要は以下の通りである. 1.CTLA-4遺伝子変異体のクローニングと塩基配列の決定:SLEの末梢血単核細胞より膜貫通領域をコードするエクソン3が選択的スプライシングによって欠失したCTLA-4遺伝子変異体をクローニングした.塩基配列より細胞外ドメインはリガンドとの結合領域を保持するが,C端側には22個の非CTLA-4アミノ酸の付加が推定された. 2.CTLA-4遺伝子変異体による蛋白発現:CTLA-4遺伝子変異体組換え発現ベクターをCOS-7細胞に遺伝子導入すると,培養上清には可溶性CTLA-4活性が検出された. 3.可溶性CTLA-4特異的モノクローナル抗体の作製とサンドイッチELISAの確立:C端側非CTLA-4アミノ酸をペプチド合成し,ペプチド-KLHをマウスに過免疫したのち,細胞融合法により可溶性CTLA-4に反応するモノクローナル抗体H11.6(IgG2a,κ)を作製した.既存のモノクローナル抗CTLA-4抗体との組み合わせによって可溶性CTLA-4を検出するサンドイッチELISAを初めて確立した. 4.SLEにおける血清中可溶性CTLA-4レベルの測定と臨床的意義:本研究にて確立したサンドイッチELISA法により,SLE症例と健常者の血清中可溶性CTLA-4レベルを測定した.SLE群では健常者群に比較して可溶性CTLA-4レベルが有意に低下していた(P<0.03).可溶性CTLA-4レベルと臨床検査データおよびステロイド1日量などとの有意な相関は認めないが,CTLA-4レベルの低下がT細胞活性化の持続に関与する可能性が示唆された. 5.可溶性CTLA-4の構造解析と存在様式:可溶性CTLA-4を含む培養上清をSuperose 12 HPLCにて解析すると,可溶性CTLA-4活性は分子量約26,000の位置に分画された.しかし,ヒト血清と混合したのちのSuperose 12 HPLCおよび陰イオン交換クロマトグラフィー解析から,血清中ではアルブミンが可溶性CTLA-4のキャリア蛋白であることが初めて明らかとなった.
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