研究概要 |
1)ストレスによるc-fos遺伝子およびAP-1活性の上昇。従来はc-fos遺伝子上流域には、熱ショック蛋白遺伝子上流に共通して見られるheat shock element(HSE)は存在しないとされていたが、我々はヒト・ラット・マウスのc-fos遺伝子上流に、HSEが存在することを証明した(BBRC 254:566,1999)。さらに、実際にprostaglandin A_1(PGA_1)が、このHSEを介してc-fosの発現を亢進させ、24時間後にはc-Fos蛋白が構成要素となっている転写因子AP-1の活性をも高めることを示した。AP-1活性の上昇は、AP-1 siteを有するレポーターの発現するルシフェラーゼ蛋白のアッセイによっては検出出来ず、ゲルシフト・ノザンブロットによるルシフェラーゼmRNAレベルでのレポータージーンアッセイおよび24時間後にPGA_1を除いた後、レポーターを導入した細胞をさらに4時間培養した後に行ったルシフェラーゼ蛋白活性の測定によって検出することが可能であった。この結果は、ストレスに応答する遺伝子の中には、ストレスによりmRNAの発現は高まるものの、蛋白の発現はストレスの最中には亢進せず、ストレスが除かれた直後(虚血後再潅流.急速な高/低浸透圧血症の是正・急速な透析等)に高まる可能性があることを示唆した(MCE164:77,2000)。 2)環境ホルモン様物質の活性の検出。1)の研究の過程で、estrogenがc-fosや熱ショック蛋白の発現を亢進させることに興味を持った.われわれは実験上,しばしばコントロール培養ディッシュにおけるルシフェラーゼ活性の上昇というトラブルを経験していたが,原因として女性ホルモン様内分泌撹乱物質が実験で用いる培養ディッシュから溶出しているのではないかという疑いを持ち,エストロゲン反応性エレメントを持つレポータージーンを用いたアッセイにより数社の製品について調べたところこの事実が確認された(Nature Biotechnology 19:812,2001).この様な事実は,さらに身近なところにも存在する可能性が示されつつあり、現在研究を進めているところである。
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