研究概要 |
1.細胞外アデノシン(Ado)がヒト滑膜細胞に与える効果:Adoが関節リウマチ(RA)患者由来の初代培養滑膜細胞に与える影響を検討した。アデノシンデアミナーゼ(ADA)抵抗性Adoアナログの2-CADOにより濃度依存性にアポトーシスが観察された。またAdoでも投与1〜2時間後から時間・濃度依存性のDNA合成低下が認められた。 2.滑膜細胞における細胞表面アデノシン受容体(AdoR):すべてのAdoRのmRNA発現がRT-PCR法により確認された。2-CADOによるcAMPの増加ならびに選択的受容体アナログによる検討からA_<2B>が機能的なAdoRと同定された。 3.Adoによるアポトーシスの分子機構:2-CADOによるアポトーシスはNBMPR感受性Adoトランスポーターの阻害薬NBTにより抑制されたが選択的AdoRアンタゴニストでは抑制されず,また細胞透過性cAMPアナログやADA阻害薬存在下でのAdoによっても細胞死はみられなかった。一方カスパーゼ阻害薬によりこのアポトーシスは抑制され,滑膜細胞内に取り込まれた2-CADOがカスパーゼを活性化しアポトーシスを誘導するという機序が明らかになった。 4.関節炎モデルにおけるアデノシントランスポーター阻害薬の治療効果:上記を踏まえ,NBTの抗リウマチ効果をラット・アジュバント関節炎モデルにおいて検討した。関節炎発症直後よりNBTを腹腔内投与したところ,メトトレキサート(MTX)と同程度の関節炎抑制効果を示した。これは関節局所でのAdo取り込み阻害による細胞外Ado増加に基づく可能性が考えられ,MTXが局所のAdo上昇により抗リウマチ効果を発揮するとする従来の報告に矛盾しない。血小板阻害薬として臨床応用されているジピリダモールの作用もアデノシントランスポーター阻害によるため,これらの薬剤による新たなRA治療の可能性が考えられる。
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