研究概要 |
本研究の目的は、全身性エリテマトーデスにおいてトレランスを破壊し、その後のepitope-spreadingを引き起こすきっかけとなる自己抗原、すなわち最も早期に出現する自己抗体のターゲット分子を同定することにある。言うまでもなく全身性エリテマトーデスの患者は発病してから初めて病院を訪れるので、この時期の血清中には多くの自己抗体がすでに存在しており、最も早期に出現する自己抗体をヒトにおいて突き止めることは不可能である。そこで全身性エリテマトーデス自然発症モデルマウスを用い、生後の間もない時期より定期的に採血を繰り返し、最も早期に出現する自己抗体とその後の自己抗体産生の拡大(展開)を調べることとした。 昨年の報告書にも記載したように、ほとんどのマウスが早いマウスでは生後4週頃から150kD,110kD,75kD,55kDの蛋白に対する自己抗体を産生した。全身性エリテマトーデスを特徴づけるとされる抗DNA抗体は上記4つの自己抗体より遅れて産生されることが判明した。自己抗体の反応する自己抗原の数は病気の進展とともに増加していった。ヒストンに対する自己抗体の出現は8週以降と比較的後期であった。 我々はまず110kD蛋白に注目してその同定を試みた。抗体による吸収実験や免疫沈降法などを駆使して110kD蛋白が核小体抗原であるヌクレオリンであることを証明した。ヌクレオリンはGranzyme Aのターゲット分子であり、抗ヌクレオリン抗体はウイルス感染で高率に出現することが知られている。何らかのウイルス感染により細胞が破壊され、ヌクレオリンのepitopeが曝露される可能性がある。また。抗ヌクレオリン抗体は成人より小児の全身性エリテマトーデスに高率に出現する。これもより早期に出現する自己抗体であることを示唆する事実とも考えられる。
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