研究概要 |
エンドトキシン肝障害において,P.acnes投与によりKupffer細胞はIL-12を産生し,この因子の作用で胸腺外T細胞がType-1T細胞(IFN-産生細胞)に分化することを明らかにしている.このP.acnes投与による肉芽形成過程ではKupffer細胞が重要な役割を演じているもと考えられる.そこで,Kupffer細胞の機能を解析する目的で,肝内環境をType-2(IL-4産生細胞)優位に誘導し肉芽形成が見られるマンソン住血吸虫感染症におけるKupffer細胞の産生するサイトカイン能と比較検討した.この結果,無処置のKupffer細胞はLPS刺激を受けると大量のIL-6とIL-10,IL-12,IL-18,TNF-αを少量産生するが,IL-4,IL-13は産生しない.P.acnesで処置されたKupffer細胞ではLPS刺激を受けると大量のIL-12,IL-18,TNF-αを産生し,遅れてIL-6,IL-10を産生するがIL-4,IL-13は産生しない.一方,マンソン住血吸虫感染したKupffer細胞は,刺激を受けるとIL-6,IL-10,IL-12,IL-18,TNF-αを産生するがIL-4,IL-13は産生しないが,マンソン住血吸虫成虫抗原(SWAP)刺激では,興味深いことにIL-4,IL-13,IL-6,IL-10を産生するが,IL-12,IL-18,TNF-αを全く産生しなかった.無処置やP.acnesで処置されたKupffer細胞はSWAP刺激を受けても全くIL-4,IL-13は産生しなかった.このように,肝内ではKupffer細胞が特異抗原の刺激を受けると特異抗原に反応してType-2を誘導するサイトカインを産生するようになることが明らかになった.特に,Kupffer細胞がIL-4を産生する知見は報告がなく興味深い知見と思われる. 申請者らは急性GVHDにおいてはヒトの場合もマウスの場合も血清IL-18が上昇することを明らかにしている.IL-18の産生が肝のKupffer細胞から産生されることを想定して,マウス急性GVHDモデルを用いて,Kupffer細胞のIL-18の産生機序を解析した.Fasリガンド(FasL)欠損マウス(gld/gld)の脾細胞を致死量放射線照射されたマウスに移入した場合,IL-18の上昇は認めなかった.そこで,in vitroでKupffer細胞を分離してFasL発現細胞で刺激した結果,急性GVHDを誘導したKupffer細胞からはIL-18産生を認めた.このことから,FasL依存性にIL-18が産生されることを明らかにした.更に,IL-18産生がcaspase-1依存性に起こるか否かを調べるため,caspase-1欠損マウスに,正常脾細胞を移入したが,IL-18の産生はほとんど認めなかった.このことから,急性GVHDではFasL依存性caspase-1依存性IL-18産生が誘導されることが明らかとなった.更に,肝臓内のリンパ球亜集団を調べると,胸腺外T細胞由来と思われる細胞群が急性GVHDの時に誘導されており,現在,その機能について解析中である.
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