研究概要 |
【背景】Wilson病は原因遺伝子ATP7Bの異常により銅代謝障害が起こり、肝臓を中心とした種々の臓器障害をきたす常染色体劣性遺伝性疾患である。我々はこれまでに同疾患患者においてATP7Bの遺伝子解析を行い、種々の変異を同定し、遺伝子型-臨床型関連等につき検討してきたが、Wilson病の中でも極めて予後不良な劇症肝炎型Wilson病においては世界的にも検討された例はない。【目的】劇症肝炎型Wilson病症例において遺伝子型-臨床型関連等につき検討した。【対象と方法】インフォームドコンセントの上、全国から協力して頂いた劇症肝炎型Wilson病患者4人(3家系)を含む51人(45家系)を対象としてATP7Bを解析した。【結果】1.特定の変異と臨床型の間には明らかな関連は見いだされなかった。2.変異によって生じる蛋白の形から、2つのallelesが共にinsertion,deletion,nonsense mutation,splice site mutationからなるtruncated群(T群)と、少なくとも1つのalleleがmissense mutationからなるmissense群(M群)に分類すると、劇症肝炎型Wilson病症例は全例T群であり、有意差を持って非劇症肝炎型Wilson病症例よりT群である頻度が高かった。【結語】今回の検討では劇症肝炎型Wilson病症例が少なく、今後の更なる検討を要するが、truncated群が劇症肝炎型Wilson病発病の一つの危険因子である可能性があり、同群に属する症例では慎重に臨床経過を追う必要があると考えれた。
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