研究概要 |
CAII、lactoferrinはともにムチン蛋白の分布する臓器と同様の唾液腺、胆管、膵臓、腎尿細管に分布している。本疾患において、抗CAII抗体や抗lactoferrin抗体を高率(90%)に検出したことは、CAIIやLFが自己臓器に対する標的抗原の候補になりうるものと推測された(Gastroenterology:2000)。更に、CAII,lactoferrinを免疫した胸腺摘出マウスでは高率に唾液腺・膵にリンパ球浸潤や細胞変性を認めた(米国消化器病学会:2000)ことより,自己免疫膵炎の発症にはこれらの抗原系に対する自己免疫学的機序の関与する可能性が考えられた。一方、自己免疫(関連)性膵炎では、健常群やコントロール膵炎群に比し、HLA-DR抗原陽性のTh1型CD4陽性細胞が増加していたが、Th2型細胞は差違を認めなかった(Gastroenterology:2000)。患者膵の免疫組織学的検討では膵管上皮細胞および腺房中心細胞にHLA-DRの強い発現を認めるとともに、その周辺に活性化CD4陽性T細胞の優位な浸潤を認めた(Am.J.Gastroenterol:1998,Am.J.Gastroenterol:2000)。更に、CAII,lactoferrinを免疫した胸腺摘出マウスでも、IFN-gの発現増強を認めた。以上より、Th1型CD4陽性活性化T細胞がエフェクター細胞として病態生理に深く関与していると考えられた。現在、CAII,lactoferrin免疫マウスを用い、T細胞株を作成中でありいくつかの候補も得られつつある。
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