研究課題/領域番号 |
11670496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 光孝 京都大学, 医学研究科, 助手 (70235472)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 増殖因子 / ヒト / チオレドキシン / ジチゾン / 小腸 / FGFR4 / チロシンキナーゼ |
研究概要 |
消化管上皮細胞における正常な分化・再生・増殖機構の解明は、移植医療、様々な腸疾患の病態、治療を行う上で非常に重要な鍵を握っていると考えられる。申請者らは、亜鉛キレート剤であるジチゾンをラットに1回静脈内投与することにより、その細胞質内に亜鉛を多く含む小腸パネート細胞を選択的に除去し、引き続いて小腸粘膜全層にわたる細胞増殖活性が促進する実験系を確立し、すでに報告した。本実験系では、パネート細胞以外の粘膜障害を引き起こすことなくジチゾン投与後12時間という短時間で、小腸全層にわたる増殖活性を促進する事ができる。この実験系を用いて、小腸の増殖に特異的な未知・既知の増殖因子、転写因子をクローニングするために、増殖因子に多く見られるチロシンキナーゼ相同領域を標的にしたプライマーを設定し、ヒト胎児小腸上皮細胞株I407より採取したRNAを用いてPCRを行った。クローニングした遺伝子は、DNAシークエンスにより、ヒトfibroblast growth factor receptor(FGFR)4のsplice variantであることが判明した。このvaliantは、膜貫通ドメインのエクソン9が、イントロン9に置き換わっており、FGFR4の可溶型レセプターとして存在していると考えられる。また、実際に発現ベクターに組み込んだこのFGFR4のvariantをCOS7細胞に遺伝子導入すると、細胞培養液中に蛋白の分泌が見られることが確認された。すでに、FGFR1、2、3についてはすでに可溶型のレセプターの存在が報告されているが、FGFR4については初めての報告である。ラット胎児小腸上皮細胞株IEC6より採取したRNAを用いたPCRでは、このsplice variantは認められず、ヒトにのみ特異的に発現している可能性が考えられる。さらにノーザンブロッティングにより、ヒト消化管粘膜上皮、膵ならびに胃・大腸・膵癌の細胞株においてその発現がみられることが分かるとともに、single cell RT-PCRによって膜貫通型のFGFR4と可溶型のFGFR4の2つのmRNAが単一細胞に同時に存在していることが分かった。膜貫通型のレセプターでは、他にもEGFレセプター、IL-4レセプター、Fasなどに可溶型レセプターの存在が知られている。続いて、ラット小腸より作製したcDNAライブラリーをCaCO2細胞に遺伝子導入して、1%血清含有培地で培養し、増殖能を有するクローンから導入された遺伝子をPCRで増幅し、その遺伝子がラットチオレドキシンであることが分かった。再度、チオレドキシンの消化管粘膜上皮細胞に対する増殖促進作用を確認するために、発現ベクターに組み込んだヒトチオレドキシンをCaCO2細胞に導入し、低血清、ジアミド、H2O2存在下で培養し、対照郡に比べて有意に増殖能に差が出ることが分かった。またsingle cell RT-PCRによってVilliの上皮、パネート細胞ともに発現が見られることが分かった。以上の結果より、すでに私達が報告した活性酸素産生能を有するxanthine dehydrogenaseがパネート細胞に存在することを併せて考えると、チオレドキシンは、消化管における増殖促進因子としての働きとレッドクス制御による粘膜再生に関与している可能性が持たれた。
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