研究概要 |
酸化ストレスは肝線維化機序の一つとして重要である。一方、肝星細胞(HSC)は肝障害時におけるコラーゲン産生細胞として肝線維化の中心的な役割を担っている。これまでに、肝線維化の初期過程においてコラーゲン沈着に先行して肝の過酸化脂質産物(MDA)濃度が増加すること、抗酸化活性を有するビタミンAがHSCの酸化ストレスを抑制し、肝線維化の予防と治療効果を発揮することを見いだしている。本研究により、1,肝線維化モデルにおいて肝コラーゲン濃度やHSC活性化マーカーであるα-平滑筋アクチン(α-SMA)発現増強と共に肝内MDA濃度上昇、生体防御酵素であるSODやGlutathione peroxidase(GPx)レベルの低下を認めた。2,単離HSCはプラスチックシャーレ上で培養するだけで活性化し、この際、酸化ストレス反応が亢進し、コラーゲン産生やα-SMA発現が増強し、SODやGPxレベルが低下した。3,II価鉄溶液により酸化ストレスを誘導した単離肝細胞は、すみやかに細胞障害を受けて、培地中にLDHとMDAを放出し、細胞内SODやGPxレベルが低下した。8〜12時間後に培地中のMDA濃度は約10^<-6>mol/lとなった。4,酸化ストレス誘導3時間後をピークに、肝細胞における転写因子NF-κB活性が増強し、IκB-α分解が促進された。5,一方、10^<-6>MのMDAを30分間培養HSCに添加するとすみやかにNF-κB活性が増強し、IκB-α分解が促進した。6,同時に、HSCのコラーゲン産生とα-SMA発現が増強し、HSCが活性化した。 これらの所見は酸化ストレスにより生じた障害肝細胞自体のMDAが、直接、肝星細胞を活性化して肝線維化を誘導する可能性を示唆し、同時に、その誘導機構において転写因子NF-κBと抗酸化的防御酵素の重要性が示唆された。
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