研究概要 |
多発進行肝癌に対する選択的遺伝子治療の臨床応用をめざして、腫瘍特異的または放射線感受性遺伝子プロモーター制御による腫瘍標的化による自殺遺伝子治療と放射線療法の併用効果を検討した。 【方法】3種類のヒト肝癌細胞株を標的細胞とし、放射性感受性遺伝子プロモーターに、自殺遺伝子HSV-TKとレポーター遺伝子を組み込んだベクターを作成し、HVJリポゾーム法にて遺伝子導入した。X線照射によるプロモーター活性を測定した。放射線療法と遺伝子治療の併用効果を、in vitroではGCVのIC50で、in vivoでは腫瘍体積と血中AFP濃度を指標にして、対照群・遺伝子治療群・放射線療法群・両者併用群にて検討した。また殺細胞効果の機序を病理組織学的に検討した。 【成績】いずれの肝癌細胞においても放射線照射によりプロモーター活性がin vitro、in vivoともに15-30倍程度増加していたが、初代培養肝細胞や正常肝組織・肺組織の活性増加は2倍以下であった。in vitro,in vivoの実験系ともにX線照射と遺伝子治療の併用群のみで相乗的な殺細胞効果が得られ、ヌードマウス移植肝癌では腫瘍の縮小・消失を見た。さらに内照射では腫瘍特異的にRIの集積を長期間認めた。また血中AFP濃度も併用群のみ低下した。組織学的検討では併用群のみ核の断片化とTUNEL陽性を示すアポトーシス細胞の著明な増加が見られ、それらはFasを介したシグナルであることが明らかになった。以上の成果はHuman Gene Therapy 10:1509-15,1999.Human Gene Therapy11:2453-2463,2000.に掲載された。またさらに放射線照射によるシグナルの解析を行うとともに(Oncogene,in press)、血管内皮細胞のPTHrP受容体刺激が管腔形成能に重要であることを示した(Endocrinology 141:4313-4316,2000.)【今後の予定】放射線感受性遺伝子プロモーター制御による腫瘍選択的発現誘導効果だけでなく、腫瘍特異的遺伝子プロモーター制御による腫瘍標的化を行う。さらに内照射により、空間的・生物学的標的化の工夫を行い、多発性進行肝癌病巣に対するより選択的かつ効果的な治療の開発をめざす。
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