研究概要 |
ヒトαフェトプロテイン(AFP)遺伝子プロモーター(pAF0.3)上流にヒト血管内皮増殖因子遺伝子上流のHypoxia responsive element(HRE)を挿入した[HRE]AF0.3プロモーターを作製し、転写活性を検討した。AFP中等度産生または非産生ヒト肝癌細胞PLC/PRF/5およびHLFでは[HRE]AF0.3転写活性は低酸素下にてAF0.3の5-100倍に増強されたが、非肝癌細胞HeLaおよびHT1080においてはいずれのプロモーターも転写活性を認めなかった。 これらのプロモーターを単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子上流に挿入したレトロウイルスを作製、PLC/PRF/5,HLF,HeLa,HT1080細胞に感染後、G418耐性の遺伝子導入細胞(PLC/AFTK,PLC/[HRE]AFTK,HLF/AFTK,HLF/[HRE]AFTK,HeLa/AFTK,HeLa/[HRE]AFTK,HT1080/AFTK,HT1080/[HRE]AFTK)を確立しガンシクロビル(GCV)の抗腫瘍効果を検討した。(1)in vitroにおいては、低酸素下にて、PLC/[HRE]AFTおよびHLF/[HRE]AFTKにGCVによる殺細胞効果が認められたが、PLC/AFTK,HLF/AFTK,HeLa/AFTK,HeLa/[HRE]AFTK,HT1080/AFTK,HT1080/[HRE]AFTKのいずれにも殺細胞効果は誘導できなかった。(2)in vivoにおいてはPLC/AFTK,PLC/[HRE]AFTK,HT1080/AFTK,HT1080/[HRE]AFTKをヌードマウスの皮下に接種し固形腫瘍を形成させた後、GCV(50mg/kg)の腹腔内投与を行ったところ、PLC/[HRE]AFTKによる腫瘍だけが消失した。 AFPプロモーター上流にHREを挿入することで、肝癌特異性を失うことなく転写活性が増強され、肝癌に対する遺伝子治療における肝癌細胞ターゲティングに有用なプロモーターとなる可能性が示唆された。
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