研究概要 |
まず,生体内に近い条件をin vitro実験系で達成するために,Et結合蛋白(LBP)存在下におけるマクロファージ機能の評価を行った。すなわち,SD系雄性ラットよりKupffer細胞,肺胞マクロファージ,腹腔マクロファージを採取し,同細胞数条件にそろえ,1%ラット血清添加(LBP存在)あるいは非添加時(LBP非存在)条件下でE Coliエンドトキシン(Et)で刺激し,培養液中のTNF-α濃度を測定した。その結果,各マクロファージによりTNF-α産生能に著明な差(Kupffer細胞<腹腔マクロファージ<肺胞マクロファージ)があり,LBP添加によりTNF-α産生能が6〜24倍増強することが判明した。次に,ラット肝硬変モデルにおいて各種マクロファージ機能を評価するとともに肝硬変病態および肝癌発育とマクロファージ機能との関連性について検討した結果,肝硬変ラットではTNF-α,IL-1β産生能がKupffer細胞で低く,肺胞マクロファージで高かった。また,硬変肝ではIL-1βとTNF-α含有量は正常肝に比較して低く,肝癌組織ではKupffer細胞の消失とともにこれらサイトカインが著減していた。プロスタグランジン受容体アゴニストを各種ラットマクロファージに添加すると,Et刺激時のKupffer細胞,脾マクロファージのTNF-α産生が抑制され,肝細胞との混合培養系において,Et刺激時低下した肝細胞のアルブミン産生を回復する傾向にあった。これらの成績はマクロファージのサイトカイン産生がEt結合蛋白により影響されること,肝硬変ではマクロファージ機能異常がありこれが病態進展,肝癌発育に関係している可能性があること,マクロファージ機能を調整することにより,肝病態が改善する可能性があることを示唆している。
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