研究課題/領域番号 |
11670531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀和 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70255454)
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研究分担者 |
永田 博司 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (00146599)
末松 誠 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (00206385)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | H.pylori / 微小循環障害 / 酸化ストレス / モノクロラミン / 亜鉛 / アポトーシス / 白血球活性化 / スナネズミ / 微量金属 / 白血球転回 / 白血球接着 / 鉄 / 活性酸素 |
研究概要 |
in vitroの系 H.pylori感染粘膜において特異的に産生されると考えられるオキシダントであるモノクロラミン負荷後の胃上皮細胞株(MKN45RGM-1,GSM06,KATOIII)の変化をタイムラプス蛍光顕微鏡システム(AQUACOSMOS,HAMAMATSU PHOTONICS)で検討した。1uMのモノクロラミンにより、MKN45細胞では、細胞質内遊離モノ-,オリゴヌクレオソーム量が増加し、DNA ladder形成が観察された。この時にミトコンドリアに存在するcvtochrome cは,NH2Cl投与によりサイトゾル分画に移行し、いわゆるmitochondrial permeability transitionが生じたと考えられた。モノクロラミン負荷後、アポトーシスの細胞表面マーカーであるannexin V感受性EGFP蛍光強度は上昇し、ミトコンドリア内膜電位感受性素rhodamine123の蛍光強度は著しく減少した。このときに、通常では、ミトコンドリア分画に存在するはずのチトクロムcはモノクロラミン負荷により、サイトゾル分画に漏出しておりmitochondrial permeability transition(MPT)が生じたものと考えられた。また、本アポトーシス経路は、caspase-1(ICE)は経由せず、caspase-3を活性化することも明らかとなった。また、モノクロラミンの負荷によりDNAラダーレベルと細胞質内オリゴヌクレオソーム量も亢進した。亜鉛のキレート化合物であるポラプレジンクは、そのL-carnosine部分がモノクロラミンと直接反応することによりアポトーシスを抑制した。 in vivoの系 生体内ではH.pylori由来の傷害因子によって惹起される上皮細胞のアポトーシスの異常亢進によってもヘム鉄が確保される。最近、一部の細菌でヘム鉄を再利用するためのヘムオキシゲナーゼ系を持つことが明らかとなったが、H.pyloriにおいて本酵素は認められなかった。つまり、本菌感染ではヘム鉄の代謝は起こりにくく、むしろ、鉄依存性の酸化ストレスが起こりやすくなる。この機序により、急性胃粘膜病変による胃粘膜出血後の胃粘膜での酸化ストレスの亢進が予測された。そこで、胃粘膜の酸化ストレスに多大な影響を与える胃粘膜微小循環障害機序について検討した。Mongoli
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an gerbilにH.pyloriを経口接種し胃粘膜微小循環の観察及び定量的検討、生化学的炎症、酸化的マーカーの検討を行った。感染2週、4週、8週、12週後に胃粘膜微小循環を生体蛍光顕微鏡で観察し、胃粘膜細静脈における白血球転回・接着を観察し、白血球転回速度、接着数を算出した。感染後の経過とともに白血球転回速度の低下と接着数の増加がみられ、胃粘膜内ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性は、2週後では感染群でも有意に上昇しなかったが、微小循環での白血球転回速度の低下と接着数の増加は明らかに認められた。12週後になるとMPO活性も感染群で有意に上昇し、酸化ストレスの指標となるチオバルビツール酸(TBA)反応物質量も有意に上昇した。また、12週後の感染粘膜では、抗酸化系の一つであるグルタチオンの含量が増加しており、防御機構も誘導されてくることがわかった。つまり、微小循環系における白血球の活性化と酸化ストレス反応は非常に早期より生じており、この時点での病態コントロールを標的とした治療ストラテジーが考えられた。そこで、亜鉛のキレート化合物ポラプレジンク含有食にて同様の感染スナネズミを飼育したところ、感染2週後に認められた微小循環内白血球活性化反応の時点で、すでに抑制効果があることが明らかとなった。一方、本研究系においては、H.pyloriの感染初期の胃粘液層内での単一ビデオフレームごとの菌動態を解析し、鞭毛の回転とそれによる軌跡のシフトを示した。このビデオ画像は、世界初の本菌の初期感染動態画像となった。一方、スナネズミ(MGS/Sea)やマウス(C57BL/6)にH.pyloriを感染させ、長期経過観察したときの胃粘膜病変の進展も比較した。胃粘膜におけるアポトーシスや細胞回転を比較すると、マウス感染モデルでは、H.pylori感染により、胃粘膜上皮のアポトーシスが亢進し細胞回転の亢進が認められたが、胃癌発生の報告されたスナネズミでは、細胞増殖のみ増加し、アポトーシスは、むしろ抑制されていた。一方、アポトーシス抑制因子であるp53の部分欠損(hetero)したノックアウトマウスでは、スナネズミで観察されたアポトーシスの過剰抑制は起こらなかった。これより、アポトーシス抑制は単にp53の異常のみでは説明できないと考えられた。H.pylori感染に伴い、胃粘膜では、微小循環系の白血球の活性化が起こり、酸化ストレスが惹起され、結果的に上皮細胞を中心としたアポトーシスが惹起されるが、長期的観点からは、このアポトーシス亢進は、正常の細胞回転に必須な過程で、この破綻が癌化と関連すると考えられる。 隠す
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