研究概要 |
大腸癌患者の普通便46症例におけるK-rasスクリーニングの検出感度は24.0%であった。大腸癌患者の液状便54例におけるK-rasスクリーニングの検出感度も24.0%であった。大腸癌患者の液状便54症例におけるp53スクリーニングの検出感度は33.3%であった。大腸癌患者の液状便54症例におけるK-rasとp53を併用したスクリーニングの検出感度は24%から41%に有意に上昇した(p=0.0084)。両者を併用したスクリーニングでは直腸からS状結腸の癌で検出率が高かった(82%)。腫瘍径が30mm以下の癌では31mm以上に比べて有意に検出率が低かった(p=0.0032)。特異度は100%であった。さらに大腸癌のより優れた遺伝子マーカーを求めて以下の三つを検討した。 1.19例の大腸癌組織とそれに隣接する正常組織におけるBck-2-Baxのheterodimer,Bcl-2-Badのheterodimerの関係を調べた。同様に、大腸癌20例を対象にしてBcl-XL,Bax,Badの関係を調べた。BaxとBcl-2のheterodimerizationの減少は大腸癌の発達に寄与することが推察された。BadとBcl-2のheterodimerizationは癌が進行するにつれて減少し、それは細胞死の抑制を意味し、大腸癌の進行に寄与することが推察された。 2.59例の正常粘膜,21例の大腸腺腫,38例の大腸癌についてRB蛋白のSer249,Thr373,Ser780,Ser795,Ser807のリン酸化のレベルを検討した。Rb5個所のリン酸化の状態は有意に正常粘膜から大腸腺腫に進む段階で増加していたが、腺腫から大腸癌へ進む段階では変化が認められなかった。これらの結果は、大腸腺腫で生じた、これら5個所のリン酸化の増加が大腸腫瘍化の比較的早期の段階で起こることを示唆している。 3.MMP-9、Sialyl Le^2、およびLamininの大腸癌組織での発現と肝転移との関連を検索し、大腸癌の肝転移の臨床予測診断としての有用性を比較・検討した。腫瘍組織のMMP-9染色は他の2者より優れた転移マーカーとなる可能性を示した。
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