研究概要 |
1.肺微小血管内皮細胞上のICAM-1,VCAM-1の発現:肺微小血管内皮細胞(HPMEC)をサイトカインで24時間刺激し、ELISA法にてICAM-1,VCAM-1の発現を測定した。IL-1β,TNF-α,TNF-α+IL-4(各100pM)によるICAM-1発現はいずれも1.0以上(単位:OD at 490nm)で3郡間に差はみられなかった。これに対しVCAM-1の発現はTNF-α+IL-4で有意な発現の増強が観察された(TNF-α+IL-4=0.691,p<0.0001 vs.IL-1β=0.015 and TNF-α=0.167)。 2.各種遊走因子が好酸球のVCAM-1発現血管内皮細胞間隙遊走におよぼす効果:Transwell insertsのフィルター上で、HPMECをTNF-α+IL-4で24時間刺激しVCAM-1の発現を誘導した。好酸球浮遊液をその上室に、各種遊走因子を下室に入れ3時間培養し、好酸球の下室への遊走率を測定した。C-Cケモカイン(RANTES,eotaxin,eotaxin-2,MCP-3,MCP-4)による好酸球の内皮細胞間隙遊走は、無刺激のHPMECに対し、VCAM-1発現誘導HPMECで有意に増強した(p<0.05)。これに対しPAF,FMLP,IL-5,GM-CSF,IL-8,MCP-2による好酸球の内皮細胞間隙遊走はHPMEC刺激の有無で差はみられなかった。 3.遺伝子組換えICAM-1,VCAM-1を用いた検討:Cell culture insertsのフィルター表面を遺伝子組換え(rh)-ICAM-1もしくはrh-VCAM-1でコーティングし、非特異的結合部位をFCSにてブロックした。好酸球を上室に、各種遊走因子を下室に入れ2時間培養し、好酸球遊走率を測定した。RANTES,eotaxin,eotaxin-2,MCP-3,MCP-4による好酸球遊走はrh-ICAM-1に対しrh-VCAM-1コーティング下で有意に増強した(p<0.05)。これに対しPAF,FMLP,IL-5,GM-CSF,IL-8,MCP-2による好酸球遊走はrh-ICAM-1とrh-VCAM-1の両者で差はみられなかった。RANTESによる好酸球遊走のrh-VCAM-1による増強効果は、好酸球を抗α4-インテグリン抗体と前培養することにより有意に抑制された。 4.まとめ:以上の成績よりC-Cケモカインによる好酸球遊走能は、α4-インテグリン/VCAM-1を介した好酸球・内皮細胞相互作用により選択的に増強される可能性が示唆された。
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