肺癌は治療に抵抗性を示す予後不良の疾患である。この治療抵抗性の原因として遺伝子変化とくにp53 induced gene PIG遺伝子群の発現の変化が知られている。本研究ではp53 induced gene、PIG遺伝子群の発現の変化を解明し端緒についた肺癌遺伝子治療をさらに発展させることを目的とする。肺癌組織を経気管支鏡的にあるいは手術的に採取し一部を10%FCS RPMIで培養上清にCDDPやBLMを加え一定期間培養しp53遺伝子活性化を試みる。その前後での発現の変化を観察する。厚生省(当時)、文部省(当時)の許可も得て、現在人の肺癌にAdeno virusによりp53を導入する遺伝子治療を昨年12月に開始した。この臨床研究を開始するに当たって患者への説明、同意文書も作成しており倫理委員会の許可も得た。患者の病巣から生検した腫瘍組織の遺伝子解析はデリケートな問題を含んでいるため取り扱いに慎重を期す必要がある。時間がかかるが、患者に十分説明を行い、文書による同意を得た上で後々問題が起きないように準備を万端整えて行っている。今までに8人の肺癌患者の生検を行ったがp53遺伝子異常が見られたのは1名でいままでの報告による頻度より少ないことが判明している。この患者は遺伝子治療の継続が出来なかったため正式な評価は出来なかったが途中、一時的な腫瘍縮小効果は見られたと考えている。PIG遺伝子の解析についてはもう少し症例を集積して行う必要がある。今後さらに検討していく予定である。
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