研究概要 |
背景:我々はこれまでの研究で以下の点を明らかにしてきた.ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)において1)IL-1βやTNFαなどのサイトカインやLPS刺激によりNOやPGI_2の産生が促進されるが,NO供与剤であるsodium nitroprusside(SNP)を加えることによりHPASMCのPGI_2産生は更に促進し,NO合成酵素阻害薬L-NMMAを加えることによってHPASMCのPGI_2産生は抑制された.SNPによるPGI_2産生の促進効果がHPASMCのCOX-2蛋白の発現の誘導によるものであるか検討する必要がある. 目的と方法:1)LPSやIL-1βで前処理したHPASMCがブラデイキニン(BK)刺激によりPGI_2産生を促進するのか,またSNPを同時に加えてインキュベートした場合に,PGI_2産生が更に促進するのか,2)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEV)のアラキドン酸代謝産物の産生パターンをHPLCで検討し,LPSを加えた時の変化をHPASMCのそれと比較検討した,3)NOによるPGI_2産生の促進効果がいかなる機序によるものであるかを明らかにするために,SNPがCOX-2蛋白の発現を増強させるか否かをWestern blot法で検討した. 結果と考察:1)LPSやIL-1βで前処理したHPASMCはBK刺激によりPGI_2産生が亢進した.SNPを同時に加えることによりHPASMCのPGI_2産生は更に亢進した.2)HUVECのアラキドン酸代謝産物は10μg/mlのLPSを添加することにより.シクロオキシゲナーゼ系の代謝産物が増加するが,リポキシゲナーゼ系については明らかでなかった.HPASMCはいずれの代謝産物の産生も増加することをすでに明らかにしており,産生パターンに差異が見られた.3)HPASMCをIL-1βで培養するとCOX-2蛋白の発現が明らかとなる.同時にSNPを加えて培養するとHPASMCのCOX-2の発現は増強し,SNPの濃度に依存して増加した.これらの結果から内皮細胞と平滑筋の両者がLPSやサイトカイン刺激に対してアラキドン酸代謝産物を産生し肺循環における血管トーヌスの維持に関与していることが示唆された.
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