研究概要 |
末梢神経,筋疾患の病態におけるフリーラジカル関連物質の関与を解明するためそれらの物質の局在や量的変化について以下のような検討した. 1.ラット糖尿病実験モデルにおいて高血糖下における虚血・再灌流によって,末梢神経における組織過酸化脂質の上昇と組織学的変化の増加がみられた.高血糖により,虚血・再灌流によるフリーラジカル生成が増大し,酸化ストレスが末梢神経組織障害を引き起こしたと考えられる. 2.ヒト病的骨格筋におけるフリーラジカルおよびアポトーシス関連物質の局在.1)ミトコンドリア脳筋症のRagged red fiber(RRF)では,Mn-SOD, eNOS, nitrotyrosineが強く発現している.また,RRF内にFas, Fas-ligand, caspase3, caspase9,Bax, Apaf-1およびbcl-2も陽性に染色され,アポトーシス誘導がRRFで起きている可能性が考えられる.2)封入体筋炎およびrimmed-vacuole型遠位型ミオパチーではFasが強く発現し,筋傷害の発症に関与している.しかし,多発筋炎ではFasは染色性も弱かった.3)皮膚筋炎におけるテネイシンの染色性は特異的で,炎症性変化に加え,虚血性変化を示唆すると考えられ,病態の検討や組織診断に有用である. 3.Cardiotoxin筋注後のラット前脛骨筋壊死・再生過程においてβ-dystroglycan>α-sarcoglycan, dystrophin,α1-syntrophin,α-dystrobrevin-1>nNOSの順に再発現する傾向がある.したがって,筋再生は筋鞘膜からはじまり筋鞘膜内側へ進行し,筋細胞骨格の支持に関与するタンパクはシグナル伝達に関与するタンパクより再発現が速い.また,nNOSの発現は再生過程においても筋線維typeに依存し,type2B線維に優位に発現する.
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