研究概要 |
脳虚血障害時の脆弱性脆弱性発生にミトコンドリア障害が関与する可能性の検討のため、 (1)砂ネズミ両側総頚動脈結紮モデルに於いて、免疫組織学的手法と局所微量定量代謝解析法の組み合わせにより、障害発生部位と非発生部位とで虚血中および血流再開後におけるエネルギー代謝の変動を比較検討した。海馬、大脳皮質、視床のいずれにおいても障害発生部位では非発生部位に比して、虚血中のエネルギー代謝の障害の程度は同様であったが、血流再開後のエネルギー代謝の回復の遅延が認められた。以上より、選択的脆弱性の発現にはミトコンドリア障害が関与している可能性が示された。(Ueda H et al.,J.Neurochem.,1999) (2)砂ネズミ両側総頚動脈結紮モデルに於いて、脳虚血の中心部の表在小動脈では血管攣縮が虚血2分後より発生した。この際には、血管周囲組織のミトコンドリアのチトクローム酸化酵素の急激な還元化とATPなど高エネルギーリン酸化合物の枯渇がほぼ同時に観察された。このことからミトコンドリア障害が血管反応性とも密接に関連している可能性を示した。(Ueda H et al.,Abst.Soc.Neurosci.1999) (3)神経組織特異物質であるN-acetly-L-aspartate(NAA)含量の変化を追跡し、エネルギー代謝物質の変化や病理組織所見と比較検討した。神経細胞死の際には、NAAが低下したが同時にATPやクレアチンリン酸(P-Cr)も低下した。しかしP-Crとクレアチンの比率やATP/AMP比などは変化がなかったため、これらは細胞死の結果としての変化で、生存細胞のミトコンドリア機能には異常がない可能性が示された(Ueda H et al.,J.Neurochem.,suppl.2000)。また、グルタミン酸受容体拮抗薬を用いた検討で、NAAが虚血障害に対する保護作用の指標にもなりうる可能性を示した(Nakano M et al,Life Sci,revised on 12th Jan.2001)。 以上、虚血障害発生におけるミトコンドリア障害の重要性につきおもに代謝解析の面から証明し得た。
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