研究概要 |
対象・方法 未治療のパーキンソン病(PD)患者25例(65.7±8.8歳),アルツハイマー病(AD)患者25例(66.8±6.7歳),筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者25例(62.3±8.9歳),脊髄小脳変性症患者35例(OPCA20例,60.5±7.1歳,CCA15例,63.3±6.7歳)および神経疾患を有しない正常対照群25例(67.0±11.1歳)を対象とし,腰椎穿刺で得られた脳脊髄液(髄液)中の3-nitrotyrosine (3-NT)およびtyrosine (Tyr)濃度を高速液体クロマトグラフィー・クーロケム電気化学検出器を用いて測定した. 結果 1.正常対照群において,髄液中3-NT濃度および3-NT/Tyr比が加齢とともに有意に増加していた(r_s=0.52,p<0.02). 2.髄液中3-NT濃度(nM)は,正常対照群1.6±0.5,PD群1.7±0.8,AD群11.2±5.2,ALS群9.0±4.1,OPCA群1.7±0.9,CCA群1.4±0.9で,正常対照群に比しAD群およびALS群で有意に増加していた(各々,p=0.0001). 3.髄液中Tyr濃度(μM)は,正常対照群6.1±1.0,PD群6.0±0.7,AD群6.3±0.9,ALS群6.2±0.9,OPCA群5.9±1.5,CCA群5.8±1.4で,6群間に有意差を認めなかった. 4.髄液中3-NT/Tyr比(×10^4)は,正常対照群2.6±1.0,PD群2.4±0.8,AD群18.4±8.3,ALS群14.7±9.2,OPCA群2.9±1.5,CCA群2.5±1.3で,正常対照群に比しAD群およびALS群で有意に増加していた. 5.AD群において,痴呆スケール(Mini-Mental State Examination score)と髄液中3-NT濃度および3-NT/Tyr比との間に有意な負の相関を認めた(3-NT濃度:r_s=-0.51、P<0.005,3-NT/Tyr比:r_s=-0.52、p<0.005). 結論 加齢およびAD,ALSの病態に一酸化窒素,特にperoxynitrite (ONOO^-)が関与することが示唆された.特に,ADでは発症機序のみでなく病気進行にもこれらの酸化ストレスが深く関与することが示された.
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