研究概要 |
平成12年度は、acetylcholineによるイヌ冠微小動脈の過分極に、糖化蛋白(AGEs)が作用するか否かを検討した。【方法】実験I:イヌ摘出冠微小動脈(内径70-300μm)にピペットを挿入し一端をこれに結紮固定した。他端は解放のままで実験槽に固定し、血管をcontrol群(C、n=4)とAGE投与群(AG、n=7)に分け、C群はMEM液、AG群はMEM液+AGE(100μg/ml)で90分間実験槽内を潅流した。この後、解放端を結紮し、血管内圧60cmH_2Oで槽内を250nmol/Lのbis-(1,3dibutylbarbituric acid)trimethine oxonol(膜電位感受性蛍光色素)を加えた36℃の生理液で潅流した。潅流液にacetylcholine(ACh,10^<-7>,10^<-6>,10^<-5>M)を加え、Wash out後にlevcromakalim(Lev,10^<-4>M)を投与し、490nm励起光による蛍光強度の変化(ΔF1)から、膜電位の変化を計測した(Kanatsuka et al,Circulation.vol98No17,SupplI-488,1998)。実験II:イヌ摘出冠微小動脈(内径70-300μm)をMEM液(C群、n=6)、または、MEM液+AGE(100μg/ml)(AG群、n=6)で24時間incuvationした後、ピペットを挿入し一端をこれに結紮固定した。他端は結紮して盲端とし、血管内圧60cmH_2Oで槽内を250nmol/Lのbis-(1,3dibutylbarbituric acid)trimethine oxonol(膜電位感受性蛍光色素)を加えた36℃の生理液で潅流し、実験Iと同様acetylcholineに対する膜電位の反応を検討した。いずれもL-NNAとインドメタシンで前処置した。【結果】ACh 10^<-7>,10^<-6>,10^<-5>,Lev10^<-4>Mに対するC群とAG群のΔF1(CvsAG、Mean±SEM)。実験I:-5.3±3.8 vs-3.1±1.7,-5.4±3.3 vs-6.0±2.6,-6.7±3.1 vs-6.9±2.8,-15.5±3.2 vs-14.2±3.5。実験II:-7.7±4.1 vs-9.5±6.4,-16.2±7.5 vs-18.5±6.9,-15.1±7.9 vs-18.6±7.8,-25.4±8.2 vs-31.0±7.5。いずれの場合においても、C群とAG群には統計的有意差は認めなかった。 以上の結果、AGEは内皮由来の過分極因子の産生、平滑筋過分極作用のいずれをも急性には障害しなかった。また、ATP感受性カリウムチャネルに対しても、急性効果は認められなかった。なお、急性効果が認められなかったため、インスリンの影響は検討しなかった。
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