研究概要 |
1.目的.病的心臓の動作状態は,心臓の性能と負荷との複雑な干渉の結果落ち着いた状態である.従って,心臓の性能のみの指標は必ずしも心臓の動作状態の評価に役立たない.駆出末期の血液の運動量は,心収縮性,拡張特性,負荷のそれぞれの変化に関連した要素を合わせ持つので、運動負荷中の病的心臓の動作状態の解析に威力を発揮すると考えられる.この新しい指標と他の運動耐容量指標とを比較し,この指標の運動耐容量評価における有用性を明かにするのが本研究の目的であった. 2.方法と対象. 横軸に左室圧(P),縦軸にdP/dtを取り,dP/dtとPの関係を1心周期に亘って描いたphase loop(時計回り)を用いて,血液の運動量の効果を計算する方法を我々は開発した.Phase loopを求めるには,高忠実度の左室圧の記録が必要なので,測定はカテーテル先端圧力計により行った.虚血性心疾患6例に運動負荷をかけ、安静時,運動中,および運動後回復期の左室圧を測定し,血液の運動量の効果について解析した.また,冠状動脈バイパス手術前と手術後1ヶ月での血液の運動量の効果を8例において比較した. われわれは血液の運動量と新しい循環動態指標であるWave Intensityとが密接に関連することを明らかにしたが,このWave Intensityの超音波法による非侵襲的測定を行った. 3.結果.運動耐用量の大きい症例では,血液の運動量の効果が大であった.冠状動脈バイパス手術後には,血液の運動量の効果は,有意に増大していた.正常例では,血液の運動量の効果によりWave Intensityの第二の正のピークが形成されることが明らかになった.僧帽弁閉鎖不全症例では,血液の運動量の効果はほとんどみられず,Wave Intensityの第二の正のピークは消失していた.
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