研究概要 |
1.平成11年度は患者血清由来IgAが培養細胞に沈着するか,またそれには断片化フィブロネクチン(FN)が確かに関与しているかを検討した.IgA腎症患者10例、健常小児10例、実験により健常人3例を対象とした.血清IgAはジャカリンアガロースで得た.ヒトメサンギウム細胞,繊維芽細胞細胞外基質への添加によるIgAの沈着の検出は,試料添加後3時間培養、試料を排除後さらに24時間培養し、periodate-lysine-paraformaldehyde固定後免疫蛍光抗体法で観察した.IgA沈着は患児においてのみ認められた.培養ヒト繊維芽細胞は培養ヒトメサンギウム細胞と同等の沈着が見られた.IgA沈着物の性状は小塊状あるいは細胞外基質繊維束に沿った顆粒状であった.患者由来IgAを抗ヒトFNモノクロナール抗体FN30-8(細胞結合domain結合部認識),FN9-1(fibrin結合部認識),FN1-1(C-末端S-S結合部認識)にて処理するといずれによっても明らかなIgA沈着の減弱が見られ,FNの関与が示唆された.さらに血清由来IgAに酵素処理FN断片化物を添加すると明らかなIgA沈着の増加がみられた.Native SDS-PAGEおよびウェスタンブロットにより患者由来IgAは大分子量側に移行していた.FNは患者では約440kDaの位置で上述の抗体によって広い幅の反応帯として検出された.総合すると,患者IgAは巨大分子化しており,性状として,単量体IgAx2〜3,単量体IgA+単量体FN,単量体〜2量体IgA+断片化FNが推定された. 2.本年度はさらに,関与するFNがそのドメインに属するかを検討するために飽和量の患者IgAを被覆したマイクロタイタープレートについて,上述の抗ヒトモノクロナール抗体によって検討した.その結果,これまで還元下では見られなかったN-末端との反応が強く認められた.また,これまで患者特異的な断片化物として見られたC-末端断片化物も患者において有意に検出された.このことから,患者においてはFN C-末端断片化物がIgAと強く関連しており,N-末端部分とともにIgAの糸球体メサンギウムへの沈着に寄与していると考えられた.
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