研究概要 |
(1)ターナー症候群は最も頻度の高い染色体異常症候群の一つであるが、他の染色体異常症候群と比較してその症状が多彩である。このことは、本症にモザイク症例が多いことと関係して、臓器別モザイク比率の違いで、その一部が説明されると考えられる。今回我々は、45,X/46,XXをしめすターナー症候群患者では、末梢血におけるモザイク比率と臨床症状に必ずしも相関が見られないことを示した。また、本核型をしめす患者の多くににおいて、46,XX細胞に通常よりも高度のX染色体不活化の偏りがあることを示した。このことは、本核型の患者において一見正常にみえる46,XX細胞に微細な異常のある可能性を示唆すると考えられ、本核型患者の症状の多彩さの原因の一つとなりうると考えられた。 (2)46,XY女性においては、従来よりY染色体上の男性化決定因子であるSRY遺伝子に点突然変異などの以上を示す症例が少なくないことが報告されており、ターナー症候群でY染色体成分を含む患者においても同じ異常があるのではないかとする意見がある。この点を検討するため、我々はターナー症候群患者90例についてY染色体特異的PCRにてY染色体の存在を検討し、うち11名のY染色体成分を含む患者においてY染色体上のSRY遺伝子の塩基配列を決定し、その異常の有無を検討した。その結果、46,XY女性と異なり変異は検出されず、この両疾患の発生機序に違いがあることが判明した。このことは大多数の症例において46,XY女性と45,X/46,XYは異なる機序で発生することを示していると考えられる。
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