研究概要 |
COX-2は,発癌物質であるTPAにより誘導される遺伝子群(TPA-induced sequence;TIS)のひとつとして1990年初期に発見され,関節リウマチ等の炎症性疾患でmRNAや酵素蛋白量の発現が上昇していることより,主に炎症の機序に関与していると考えられている.我々は,ヒトの多核白血球(PMN)に細菌毒素であるLPSを作用させた時にCOX-2をふくめたアラキドン酸代謝に関与した酵素群の遺伝子発現,酵素蛋白量,およびその活性がいかなる影響を受けるかについて検討した.LPSを作用させることにより,用量依存性(1-10,000ng/ml;Max100ng/ml),時間依存性(6-8時間インキュベーション後に最大)にTXB2の産生が増加することが明らかとなった.その機序はRT-PCR法で測定したCOX-2とcytosolic PLA2のmRNAが用量/時間経過に対応して増加していること,また,COX-2に関してはmRNAの変動がWesternblot法で測定したCOX-2酵素蛋白の量と平行して増加することより,遺伝子レベルでの調節が存在することが明らかである.すなわち,細菌毒素はPMNのシクロオキシナーゼ代謝系を活性化するが,その機序はソクロオキシゲナーゼ代謝系酵素のmRNAレベルでのup-regulationであることが明らかとなった.つぎに川崎病急性期の患者のPMNで誘導されるCOX-2 mRNAに対するelastase阻害剤ulinasatinの効果を検討し,その作用機序について解析をおこなった.TXA2は強い血小板の凝集作用を有し,血管病変の進展に関与していると考えられる,川崎病の急性期にはPMN産生TXA2(安定代謝物TXB2をRIAで測定)は著明に上昇した.これはCOX-2のmRNAの誘導によるものであることが明らかとなった.Ulinastatinの投与により,COX-2 mRNAの発現は明らかに抑制され,同時にPMN産生TXA2値も有意に抑制された.これはUlinastatinの新しい薬理作用であり,本来のelastase阻害剤としての作用に相加的に作用するものと考えられる.
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