研究概要 |
平成11年度の研究では,ゼラチン含有ワクチン接種後に,即時型,あるいは非即時型のアレルギー反応を呈した乳幼児の末梢血単核球をゼラチン抗原とともに培養し,RT-PCRを用いての定量的な検討で,患児の末梢血中にゼラチン特異的なTh1,Th2両メモリー細胞が存在することを明らかにした. 平成12年度には,感作リンパ球の正確を更に詳細に検討することを目的にして,ゼラチンアレルギー患児の末梢血より抗原特異的Th1,Th2クローンの作成を試みた.つまり,患児末梢血より単核球を分離し,ゼラチン抗原とIL-2,IL-12などの存在下に培養を続けたが,ゼラチン抗原特異的なT細胞株を樹立する事はできず細胞は死滅した.この理由として感作細胞自体の脆弱性,さらに技術的な問題などが考えられた. 次にアレルギーを惹起しない,あるいは惹起し難いゼラチン製剤の開発を目指し,ゼラチンアレルギーを有する患児の末梢血リンパ球の,酵素分解処理ゼラチンに対する反応について検討した.患児末梢血より単核球を分離し,通常のゼラチンと酵素処理ゼラチンを添加して5日間培養し,^3H-thymidineの取り込みを調べた.酵素処理ゼラチンに対する反応は,非処理ゼラチンに対する反応と比べ概して弱く,半数以上の患児のリンパ球の反応は陰性,つまり感度以下となった.47%の患児のリンパ球は酵素処理ゼラチンに対して依然反応を示したが,そのほとんどの例において反応の低下がみられた.今後はゼラチンの感作が成立している個体における,酵素処理ゼラチン接種後のin vivoでの反応について臨床的な評価を行っていくことが必要と考えられた.
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