研究概要 |
小児期のTT virusの病態と感染経路に関する研究において,5'非翻訳領域(Takahashiの方法)およびN22領域(Okamotoの方法)に設定した2種類のprimerを用いて検出率を検討した結果以下の成果を得た 1)輸血歴のない妊婦のTT virus感染率はTakahashiの方法で61.3%,Okamotoの方法で12.9%であった. 2)臍帯血,母乳,だ液中のTTV陽性率を検討すると,Takahashiの方法では,12%,35%,96%であったのに対し,Okamotoの方法ではそれぞれ,0%,0%,50%であった. 3)2家系でのTT virusの相間性をみると,同胞間の相同性は99.5%,92.3%であったのに対し,母子間でのそれは99.5%-100%,62.6%-63.9%で,後者の家系では母親のそれと大いに異なっていた.前者の家系では母子感染が示唆された. 4)輸血歴のある小児,輸血歴の無い正常な小児,B型肝炎,C型肝炎,非A-C型肝炎の小児におけるTT virus陽性率は,Takahashiの方法でそれぞれ79%,60%,50%,71%,58%,Okamotoの方法でそれぞれ32%,7%,0%,21%,20%であった。.Takahashiの方法では非A-C型肝炎群とコントロール群との間でTT virus検出率に差を認めなかったが,Okamotoらの方法ではコントロール群に比し非A-C型肝炎群で陽性率は明らかに高かった.このことから非A-C型肝炎群の一部の原因としてTT virusの関与が示唆された. 5)非A-C型肝炎群とコントロール群でTT virus genotype1の検出率を検討すると,前者では80%(8/10)検出されたのに対し,後者では32%(8/25)であった.この結果は,TT virus genotype 1が肝炎発症により密接に関与していることを示唆した. 成人ではTT virusは無害なウイルスとされつつある.しかし小児期,得に初感染がおこる小児期ではTT virusは病原性のあるウイルスである可能性がり,この点に関して更なる検討が必要と考える.
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