研究概要 |
新たに確立したフローチャンバーシステムを用いて、生理的流動状況下における粘着蛋白フォンヴィレブランド因子(vWF)の機能を解析し、以下の知見を得た。 1.vWFは血小板血栓形成の最も初期相であるThrombogenic surfaceへの血小板粘着に重要な役割を果たすことが従来より知られていたが、粘着にひきつづく凝集から3次元的血栓の進展においても、高ずり応力下においては決定的に重要であることを明らかにした。従来、凝集はインテグリンαIIbβ3の機能が主役と考えられていたが、vWF-GP Ib反応がこれをinitiateしていることが判明した(Sugimoto M,et al.Int J Hematol 69:48-53,1999)。 2.また、各種粘着蛋白、血小板膜蛋白の先天性単独因子欠損症であるvon Willebrand病、無フィブリノゲン血症、Bernard-Soulier症候群、血小板無力症の血栓形成能をこのシステムで評価し、各欠損因子の高ずり応力血流下での機能を解析した。その結果、高ずり速度下ではvWF,フィブリノゲンが特異的かつ協調的な粘着機能で血小板血栓の成長を制御していることが判明した(Tsuji S,Sugimoto M,et al.Blood 94:968-975,1999)。 3.vWF表面上での血小板粘着過程における血小板活性化を、細胞内カルシウム動態に焦点を当てて解析した。細胞内カルシウム蛍光色素の新たなcombinationを開発し、リアルタイムに流動状況下での血小板粘着過程における血小板活性化過程を可視的に明らかにした。この結果、血小板カルシウムの上昇は粘着の後、凝集の前に生じることが判明し、インテグリン活性化メカニズム解明の1つの重要な端緒となった(Kuwahara M,Sugimoto M,et al.Blood 94:1149-1155,1999)。
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