研究概要 |
[目的と方法]本研究では、20歳以下の小児ならびに若年成人を対象として、若年肥満にともなう心血管系への影響、合併症の実態を把握するために身体計測、BMI(body mass index)、肥満度、血圧、血液検査(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、空腹時インスリン値(IRI)、空腹時血糖値(FBS)、レプチン、PAI-1(plasminogen acitvator inhibitor-1)、HOMAインスリン抵抗性指標)、心臓超音波検査(左室心筋重量係数(LVMI)、左室壁厚係数(LVWT/height)、左室拡張終期内径指数(LVIDD/height)、腹部超音波検査(皮下脂肪厚、内臓脂肪厚)、上腕動脈血管超音波検査(血流依存性血管拡張率(%FMD)により検討した。43名の肥満・2型糖尿病の患者(年齢10.7歳、身長148cm、体重60.7kg、各平均値)を対象とした。[結果]4例(9.3%)に左室肥大(LVMI>45g^*m^<-2.7>)を認めた。多変量解析ではBMIのみがLVMIの独立した関連因子であった。BMIは単独でLVMIの変動の46%を説明した。同様にIRIにたいしてはPAI-1が、PAI-1にたいしては内臓脂肪厚が独立した関連因子であった。左室肥大様式としてはLVWT/heightには有意にBMIと相関したが(r=0.35,p=0.02)、LVIDD/heightとは相関しなかった。肥満患者の%FMD(6.6+/-5.2%)は有意に正常対照(13.1+/-5.3%)に比べて低下していた(p<0.001)。%FMDと相関が認められたのは、LVWT/height(r=-0.43,p=0.05)、LVMI(r=-0.35,p=0.027)であった。[結論]以上より、小児肥満にともなう左室肥大は求心性肥大を主体とし、肥大程度には肥満重症度が主たる関連因子で、かつ肥大の成因には末梢血管内皮機能異常が関連すると考えられた。
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