研究概要 |
糖原病III型(GSDIII)はグリコーゲン脱分枝酵素(AGL)の遺伝的欠損症で、臓器に異常グリコーゲンが沈着し、多彩な臨床症状を呈する代謝疾患である。私達はGSDIII型患者を解析し、日本人のAGL変異について分子遺伝学的な検索を行なっている。本研究では9家系から10個の異なる遺伝子変異を同定した。 1.9家系10人のGSDIII患者を対象に、AGL遺伝子の塩基配列をdirect sequencingにより決定した。その結果、ナンセンス変異1(L124X)、塩基欠失3(587delC,2399delC,4216-4217delAG)、塩基挿入1(2072-2073insA)、スプライシング変異3(IVS14+1G>T,IVS29-1G>C,IVS33+5G>A)、ミスセンス変異1(G1448R)、塩基重複1(4735-4736insTAT)の計10個の遺伝子変異を同定した。このうちIVS14+1G>T(私達が1996年に報告した変異と同一)以外は、すべて今まで報告のない新奇な変異であった。 2.北アフリカのユダヤ人患者の大多数は共通の遺伝子変異(一塩基欠失)を持つという報告があるが、対照的に日本人患者のAGL遺伝子変異は多様であることが本研究で明らかになった。 3.ヒト、ウサギ、酵母などの異なる種におけるAGLcDNAをホモロジー検索すると、蛋白のC末端にグリコーゲン結合部位が想定された。GSDIII型患者から、同部位にミスセンス変異(G1448R)および塩基重複によるチロシン残基の挿入(Y1445-1446ins)を同定したことはこの仮説を支持する所見であった。
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